育児してなきゃ酒浸り日記

30代のサラリーマンです。2人の息子と妻との日々を書いています。只今育休中です。

『イクメンじゃない「父親の子育て」』を読む。父親の姿は1つではない

子育てする父親だけど、イクメンじゃない?! イクメンがもてはやされる現代日本において、父親が子育てに関わりづらいのは、 長時間労働だけが原因なのだろうか? 本書では「男らしさ」と「ケアとしての子育て」という観点から、 父親の子育てをメディア(育児雑誌厚生労働省ホームページ)や父親へのインタビュー調査より分析し、イクメンとは異なる、父親の子育てへの新しいまなざしを示す。 本著紹介文

図書館で借りていた本。育休に入る前に一度借りていたけど、内容がちょっと堅めというか、論文調でやや回りくどい感じがしていたため、でなかなか時間をかけて読む気になれなかった。育休当事者になり、少しずつではあるがあらためて読んでみる。

本書は、筆者の博士論文をもとに出版されたとのこと。紹介文を読むと軽い感じがするけど、まさに論文を読むような文書で、他のイクメン本とはちょっと毛色が違ってくる。ただ、他のイクメン本でも引用されることが多いように思うので、数少ない学術本且つ、比較的わかりやすい本なのだろう。なお、論文は筆者の大学HPからも無料で読むことができる。

https://omu.repo.nii.ac.jp/records/2546

書籍の目次は下記の通り。

<目次> 第1章 「父親の子育て」再考―〈ケアとしての子育て〉と男らしさのジレンマ 第2章 育児雑誌における父親像と性別役割分業 第3章 公私領域と「父親の子育て」―イクメンプロジェクト(厚生労働省)ホームページの父親の育児体第4章 「父親の子育て」と公私領域のジェンダー規範―インタビュー・データから 終章 「父親の子育て」から〈ケアとしての子育て〉へ

第2~4章は実際の研究内容だが、サンプルがやや偏っているため(筆者自体もそれは認めている)、一般的な見解を述べるというよりも、主張の補強という位置づけなのだと思う。読んでいて興味が引かれたのは、やはり第1章と、結論となる「終章」であった。

筆者は、理論上考えられる父親像として、下記の表でまとめている。

引用:巽真理子『「父親の子育て」再考 : ケアとしての子育てと現代日本の男らしさ』P50 https://omu.repo.nii.ac.jp/records/2546

上にある「本質的な男らしさ」「『一家の稼ぎ主』という男らしさ」「ケアとしての子育て」の3つの有無をもとに、父親像を8パターンに分類している。なお、3つの指標について、筆者は下記の通り表している。

①本質的な男らしさ:男性が産まない性であるという、身体性にもとづく本質主義的な男らしさ ②一家の稼ぎ主という男らしさ:そのまんまの意味 ③ケアとしての子育て:交流や世話を中心とした親子間の相互行為と関係

ちょっと表現が硬い…。間違っているかもしれないけど,①はいわゆる「厳格な父」「波平的な畏怖」といった感じだろうか。②はそのまんまなのでいいかな。③はいわゆる労働として表現しやすい保育活動や家事、さらには日頃の遊びなどだろうか。現代において一番求められているのは、言わずもがな③のケアとしての子育てだろう。そして、一昔前の男性は、決して父親をやっていなかったわけではなく、①と②に集中していたということなのだろう。現代の父親は①と②だけではなく③も必要とされるようになっているわけだ。そして、女性の社会進出なども相まって、①や②のウエイトを減らすことを暗に込められているのだろう。ただ、そのへんの認識のギャップが世代間で埋めきれていないように感じられる。そういった視点を考える上でも、上の3つの指標は状況整理にもつかえる。

上記の表でみてみたとき、私はどれだろう?自己評価としては1か5になるのかな。

こういったカテゴリー分けはありそうでなかったので、色々な育児関係の情報に触れる際に新しい目をくれる。少し前にラジオで「父親にも様々なレイヤー(ピラミッドのレベル)があるから、受け止め方も反応も違ってくる」というようなことを言っていたけど、まさに上記の父親パターンのことを指すのだろう。ドラマの『アットホーム・ダッド』に出てきた阿部寛は、2→4→3→1と変わっていったのだろうか。宮迫は7だろうか。 なお、筆者いわく、『ひよこクラブ』のような育児系雑誌を調べたところ、対象となる父親タイプは1か2ばかりで、それ以外の父親タイプには触れていなかったとのこと。また、インタビューした父親たちのタイプも、1か5ばかりだった模様。確かに電子書籍とかで育児体験本を読んでみると、1か5の男性が多いのかな、とあらためて思うのでおもしろい。

引用:巽真理子『「父親の子育て」再考 : ケアとしての子育てと現代日本の男らしさ』P145 https://omu.repo.nii.ac.jp/records/2546

つまり、育児に向き合う父親の大半は、一家の稼ぎ主という呪縛から開放されないまま育児に向き合っているということである。筆者はこの点を改善すべきと強く指摘している。

まあ、当事者としては上の8パターンの父親が色々存在する世の中になればいいなと思う一方、男社会の呪縛はなかなか強固なので…そう簡単じゃないんだろうなと思う。

自分自身の状況把握のためにも面白い本。これから育児関連の情報に触れる際にも、頭の整理に役立ちそう。ちょっと硬いけど、父親になる人におすすめ。