育児してなきゃ酒浸り日記

30代のサラリーマンです。2人の息子と妻との日々を書いています。只今育休中です。

『男が心配』を聴く。男の悩みに共感しつつ、解決策は難しい…。

「あぁー」「はぁー」。 男たちの哀愁漂うため息は聞きなれていた。だが、この日の彼はいつもと違った……。 理想の女性に見下され、婚活に挫折した男性、育休をとったため、出世コースから巧妙に外された男性、生涯現役という甘い罠にはまり暴走した男性など、日本では多くの中年男性が「生きづらさ」を抱えているにもかかわらず、その苦悩がメディアに取り上げられることは少ない。 本書では、恋愛・結婚から、定年後の生き方、職場での出世競争、わが子の育児、老親や妻の介護まで、人生の節目で男性たちが直面する問題を取り上げ、男性が背負わされている理不尽ともいえる現実をリアルにあばき出す! 本書紹介文

育児や家事の合間に、オーディブルで『男が心配』を耳読書。読み放題でいろんな本が読めるオーディブルはありがたい。

奥田祥子氏は、現在、近畿大学教授で、ジェンダー論などの専門家。元々記者だったようで、男の生きづらさに関する本をいくつか出版している。本書もその中の一つで、現代の男性が抱える苦悩をいくつかの事例を踏まえながら取り上げている。事例となる男性を20年以上にわたってインタビューしているので、時系列で変化する心情をまとめているのが興味深かった。また何よりも女性のジェンダー研究者で、男性の理解者として書いているのはとても新鮮。なんとなく、女性のジェンダー研究者って、男を悪者にする傾向にあるように思っていたので(違ったらごめんなさい)。

上記の紹介文にあるように、育休取得者の苦悩、出世競争の苦悩など、自分自身もリアルに実感していることも取り上げていたり、なんとなくこれから不安になりそうな両親の介護の悩みなども取り上げていたりと、とても興味深く読んだ(聴いた)。

こういった苦悩の事例紹介と、それに対する解決策を提示しており、一つに男が故の「承認欲求」の基準を下げることが強調されている。出世に対する強い意識、良き父親になるという強い意識などは、周りから認められたいという気持ちのあらわれであるが、その意識の高さが苦悩の元凶というわけである。それはわかるのだが、これは一個人の意識改革はかなり難しく、社会的な空気が変わらない限り、なかなか難しいんだろうなあ、と思うのが本音である。ただ、筆者の言いたいことはわかるので、まずは自分自身で「周りから認められたいという気持ちにとらわれてない?」と適宜自問してみようとは思った。承認欲求を消すことは難しいけど、自覚することから始めたい。

ちなみに、少し前に『イクメンの罠』という本を読んだが、この著書の中では、「威厳ある父の役割を担わなければならない」ということを筆者の思い強めに記されていた。

https://kosodate-yaro-taro.com/%e3%80%8e%e3%82%a4%e3%82%af%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%81%ae%e7%bd%a0%e3%80%8f%e3%82%92%e8%aa%ad%e3%82%80%e3%80%82/

『男が心配』の中で、まさにこんな意識を地で行く男が出てくるのだが、妻や子どもとの関係が悪くなるなど、厳しい状況に陥っていく。そして、筆者は「そんな男性役割意識は時代的に終わっており、それにいつまでも固執するべきではない」というような対極的なことを記しており、なんだかおかしくなった。無論、私もこちらの著書の方に完全に同意である。ただ、潜在的には『イクメンの罠』で記されているような権威的な父親を良しとする人も、それなりの割合でいるのかもなあ、と思うと、まだまだ社会的な空気が変わるには時間がかかるんだろうかなあ、と、やや将来に不安を覚えたりもした。

本書は学術書というよりも、ジャーナリスト出身の著者目線の男性ルポのような内容。男性が読んだら「よくぞ書いてくれた」と思うのではないだろうか。悩みを可視化してもらえるだけで、なんか元気が出るものである。新しい学びがあるというよりかは、読者である私も悩み相談に乗ってもらった感じ。文章も読みやすく、面白い本でした。

一方、女性が読んだらどう思うのか気になった。男性立場としては、ぜひ女性の皆さんに読んでほしい(特に妻に読んでほしい)と思うのだが…、多分、そんなことを言ったら嫌われるんだろうな。女性の苦しみを記した本をよんでも、男性陣はわかった気になる一方、完全な同意はしにくいのと一緒かな。