育児してなきゃ酒浸り日記

30代のサラリーマンです。2人の息子と妻との日々を書いています。只今育休中です。

『縛られる日本人』 海外の教授が書いた日本の出生率に関する本。中身は真っ当だが、読者は選ぶ。

人口減少が進む日本。なぜ出生率も幸福度も低いのか。日本、アメリカ、スウェーデンで子育て世代にインタビュー調査を行いデータとあわせて分析すると、「規範」に縛られる日本の若い男女の姿が見えてきた。日本人は家族を大切にしているのか、日本の男性はなぜ育児休業をとらないのか、日本の職場のなにが問題か、スウェーデンアメリカに学べることは――。アメリカを代表する日本専門家による緊急書き下ろし。 本書紹介文より

図書館で借りた本。タイトルからは想像しにくいが、日本の育児への向き合い方について、ハーバード大学ライシャワー日本研究所(?)の所長である筆者がまとめた本。中公新書っぽくない内容というか、ハヤカワ書房の翻訳本っぽい感じ。実際、著者が一度英語でしるした本を、翻訳家が訳しているようである。

日本の出生率が下がっている要因を、マクロな視点と具体的な事例とを織り交ぜながら解説する。そして、男性の育児休業の拡大が、その状況に変化を与える重要な要素であることを指摘しつつ、一方で、なぜ男性の育休が増えないのか、他国(アメリカとスウェーデン)とは何が違うのかを解説する。そして、最後に、状況を変えるための具体的な政策提案を4つ記している。

内容はいたって真面目、というか、他の育休本にはあまりない硬い雰囲気。ただ、ちょっと説明が回りくどく、「いや、そこまで当たり前のことをくどくど説明しなくてもいいよ」と突っ込みたくなることが多かった。でもまあ、読者を外国の方と想定しているならば丁寧な内容なのだろう。

私の中のメモは以下の感じ。

日本の出生率がなぜ低いのか?それは男性の育児参加意識が低く、女性の負担が大きすぎる。 なぜ男性の育児参加意識は低いのか?それは社会規範として男性が育児に参加する雰囲気ではないから。ただし、育休制度は他国よりも優れている。 社会規範として育児に参加する雰囲気ではないとは、具体的にどういうこと?それは職場が男性育児を歓迎していない。また、当事者も先入観(多元的無知)によって、歓迎されていないと強く思いがち。 どうすれば社会規範を乗り越えられる? ・保育園を入りやすくする政策 ・既婚者の税制を変更(150万円の壁のような配偶者控除をなくす。これで女性が正社員として働きやすくする) ・育休取得の補助を強化(2ヶ月は100%補填など) ・男性育休を義務化する ・業務内容の男女差別(女性に責任の少ない仕事を課すなど)をなくす

言っていることは至極真っ当。ただ、読んでいてどうも腑に落ちないというか…嫌な言い方をすると「綺麗事だよなあ」と感じてしまうところも多かった。

この本で指摘していることは最もなのだけど、男性が育児に参加できない理由は勤務時間外の労働が常習化していること、次に繋がらない飲み会・接待文化、雑談大事を強調してダラダラ話し込む、無限会議地獄、意思決定に対する社内承認が延々と続く、などもあると思うのだが、そういうところにはあまり触れられていない。男性育休だけを推進しても、育休が終わったあとに元の木阿弥になってしまうので、もっと幅広く改善に取り組まなければならないと思うのだが…どうなんだろう。

男性育休の義務化は賛成。やっぱり同僚の目が気になるから、いっそ国が「お前子ども出来たなら絶対育休取れよ」って言ってくれたほうが、「ごめんなさい、皆さんに迷惑かけますが、義務なので取らせていただきます」といいやすい。ただ、義務にしないと取れない悲しみを感じずにはいられないが…。

まだまだ議論の絶えない出生率低下や育休制度だけど、海外教授の客観的な視点を知る事ができる貴重な本。でも、読者は限られるだろうなあ、とは思う。育休取得者やこれから取得を考えている人が読む感じではないし、会社の人事が読んでもどうしようもないし…教授が国に政策提言しているから、やっぱり学者とか政治家、そこらへんに近い人が読む本、という感じではあった。