天気 晴れ 。
夕方、妻が保育園から一太郎を迎えに来る。妻の帰りを待ちわびていた私は、
「それで、どうだった?ハナコ先生いた?」
と尋ねる。妻は
「あーごめん、ハナコ先生が出てこなくてさ。奥の方にいたみたいだけど。一太郎が暴れちゃってチャンス逃しちゃった」
と笑いながら話す。「そんな…」と、ガックリとうなだれる私。だが、落ち込んでいる暇はない。このあとすぐに一太郎のインフルエンザ予防接種に行かなくてはならなかった。
「来週の月曜日はお願いよ!これは家族の問題なんだからね」
と切実に訴える。妻は「わかったわかった。でもさ、別にハナコ先生も気にしてないって。どうでもいいって思ってるよ」と言っているが、果たして。。。
私が妻にお願いしていたのは
「私がランニングに出発する姿を、ちょうどマンションの入口にいたハナコ先生に見られてしまったこと」に対する弁明
である。なんのことか?
事件が起こったのは11月22日(水)である。
この日は妻が息子二太郎を連れて、母乳外来に行く日であった。10時頃に出発し、戻りは昼過ぎになる予定だったので、午前中は私一人で留守番することになっていた。
いつもは妻と二太郎と私の3人で平日の日中を過ごしていたので、家で私一人で過ごすのは本当に久しぶり。次に一人になれるのはいつになるかわからないので、このひとときを有意義に過ごしたかった。
一太郎を保育園に預け、朝食の片付け・洗濯・掃除といった家事を大急ぎで片付けていく。妻と二太郎が10時に出ていったあと、私はスルスルと運動着に着替える。
久しぶりのひとり時間はランニング時間にしようと思った。育休中は運動不足で体中の筋肉が衰えているのを感じていたので、体を動かしてリフレッシュしたかったのだ。やっぱり運動は気持ちいいからね。ほら、こうみえてオレ、体育会系なのよ?最近はすっかりウラナリだけど。
着替えを済ませて意気揚々とマンションを出る…やいなや、マンション入り口でばったり保育士のハナコ先生(ベテラン)に出くわす。
「あ、どうもです・・・」
ハナコ先生「保育園で使う材料を買いに出てたんだけど、まさか家の前で」
「そうですね…いや違うんです、これは」
(まずい…これはまずい…)
心のなかで警報が鳴る。浮気現場でも目撃された気分(あ、浮気したことはないから正確にはわからんけど)。
なにがまずいって、夫婦で育休取っているのに、父親が外でランニングしているというのは、なんかまずい。捉えようによっては、「普段の家事育児を奥さんに任せて、旦那の方は取るだけ育休で自分の時間を満喫してる」と思われかねない。それに、保育士さんにこのように思われたら最悪である。「私達に一太郎くんを任せて、自分は~」となるわけである。これは一太郎にも迷惑がかかるおそれがある。私はなんとか弁明を試みる。
「あの、今日は妻と二太郎が助産師の方のところに行って、えっと、母乳外来なんですよ。それで家で久しぶりに一人になったので、ちょっと運動でもしようかなあ、と思った時に、こうやってばったりと」
ハナコ先生「あ、そうなんだ。二太郎くんと一緒なんだ」
「ええ、そうなんです!だからこうして久しぶりに、本当に久しぶりにランニングを少ししてみたところなんですが、妻たちもすぐ戻るので、まあ、ほんの一瞬のランニングなんですが」
ハナコ先生「そうなんだ~でもやだわねえ、こうして家の前で会っちゃうなんてね。この前も奥さんにばったり会っちゃったのよ?…じゃあ、とりあえずいってらっしゃい(笑)」
「ええ…久しぶりに行ってきます…なんかすみません」
と、なんだかバツの悪い感じ丸出しでランニングに出る。後ろを振り返りたかったが、振り返らずに逃げるように走っていった。
母乳外来から帰ってきた妻に事情を話すと、妻はニヤニヤと笑っている。
妻「大丈夫よ、あなたは私が入院しているときも体調崩しているときも一人で育児やってくれてたんだから。ハナコ先生だってよくわかってくれてるでしょ」
「そういう言葉がほしいんじゃないのよ。とりあえず…ね?頼むよ」
妻「要するに、今日一太郎を迎えに行ったときに、私の方からハナコ先生に『夫と午前中に会ったみたいで。いや、私の方から夫に言ったんですよ。ずっと家に引きこもっていると体に悪いから、今度一人になった時にジョギングでもしたら?』って言えってことでしょ?」
「話が早いじゃないの…さすが夫婦ね。頼むよ?いい夫婦の日なんだから」
妻「何買ってもらおうかなあ」
しかし、22日の夕方、妻が保育園に一太郎を迎えに行った際、ハナコ先生はいなかったらしい。仕方ないので祝日明けの今日24日に再度妻に弁明してもらうようにお願いしていたのだが、冒頭に記した通り、結局ハナコ先生には弁明できずに金曜日を終えてしまったのであった。来週月曜日に再度妻に弁明して貰う予定だが・・・どうなることやら。
なんか育休中って、暗黙のうちに「育児以外のことはするなよ」と言われている気がしている。育児をしている時はあまり感じないのだけど、育児以外のことをしている時は強烈に感じる。周囲の目も気にしてしまう。
もちろん家事育児はしっかりやりますが、それを済ませた上で少しの時間をリフレッシュに当てるというのは…許されないものなのだろうか。いや、俺のただの被害妄想かもしれないけど。
でも、もしも同僚の立場で考えたら、「俺らに仕事を押し付けて、育児以外のことをするとはいいゴミブンだな」と思われても何も言えない気がする…。俺ももし育休取ってなかったら、育休取った同僚に対して同じように思っていたのかな。結構仕事人間だったからな、ボク。
育休中の肩身の狭さと言うか、まあ、それは甘んじて受け入れるしか無いかな。変に堂々としていたら反感買いそうだしな…。
インフルエンザワクチンで大泣きした一太郎と、最近兄と一緒にユーチューブを観ている二太郎。どちらも私の小さな悩みなど知る由もない。
とりあえず来週の月曜日に妻に弁明してもら得ることを願うばかり・・・。