育児してなきゃ酒浸り日記

30代のサラリーマンです。2人の息子と妻との日々を書いています。只今育休中です。

衝撃すぎるほど救いのない親 『母という呪縛 娘という牢獄 』を読んで

 

土曜日。晴れ。

 

少し前に妻から、同じ本を読んで感想を言い合おう、という読書会の提案を受けた。以前はこういう事してたけど、子供が生まれてからは少なくなっていた。

 

今回は妻が選んだ本。『母という呪縛 娘という牢獄 』である。

 

 

母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
獄中であかりは、多くの「母」や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。
殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。

本紹介より

 

2018年に実際に起こった事件に関するノンフィクションである。「滋賀医科大学生母親殺害事件」と検索すれば、詳細に情報を知ることができる。

娘が自分の母親を殺害し、更に遺体をバラバラにするという、なんとも衝撃的な事件。

 

この事件のことは、正直あまり覚えていない。まだ独身だったから、「なんかすげー事件だな」くらいの気持ちで観ていたのかも知れないけど。

 

娘と母との歪んだ関係性を、出生段階から最後の時まで、積み上げるように話が進んでいく。こういうたぐいの本を読むと、「最初は普通の家族だったのに、とある出来事を契機に少しずつ壊れていく」という感じか、もしくは「最初からおかしい家族」という感じのいずれかのパターンが多い気がする。本書の場合は間違いなく後者で、最初から最後まで母親の異常性が事件の要因になっているように記されている。犯人である娘が、実の母親を旧ツイッターで「モンスター」と表現しているが、まさにそんな感じである。

 

 本の内容通りならば、娘さんには同情しかない。大変な人生だったので、罪を償った後は、自分の人生を大事にして生きてほしい。

 ただ…表現が難しいけど、正直この手の本はあまり好きではない。本のあとがきを読む限りなので正確にはわからないけど、本の内容は主に犯人である娘からの情報に基づいて書かれていると思われる。母親当人はすでに亡くなってしまっているので無理だとしても、もう少し別の関係者(例えば、本書内で出てくる母親の友人や親族)からも情報を得てほしかった。じゃないと、「モンスターの母親が異常だったからこの事件が起こった」、という以外の感想を持ち得ないからである。

自分も子育てをする身になり、子育てに過剰に責任を感じたり、周りの子供と比較したり、自分のコンプレックスを子供に押し付けてしまったりする行為が、決して他人事ではないことを痛感している。

だからこそ、この母親の顔をもう少し知りたかった。もちろん知った上で救いがないほどのモンスターだ、と感想を抱いていたかも知れないのだが。

 くり返すが、この本を読んだ後は、母親の際立った異常性が原因になったとしか思えない。それだけなのだ。

 

 もちろん、筆者の取材に基づく細かい描写や、文章の上手さは否定しない。わかりやすいし最後まで一気に読み切った。けれど…なんというか、この事件って、そんなにわかりやすいものではなく、本で読む以上にもっともっと奥が深くて複雑な事件何じゃないかな、と読後に漠然と思ったのであった。

 

なお、ミスターサンデーでこの事件が再現VTR付きで取り上げられていたらしい。

 

www.youtube.com

 

一応観てみたけど、本の内容を更に30分程度に圧縮したせいか、さらに色々な要素が削ぎ落とされ、母親の異常性だけが強烈に残っている映像に思えて…なんだかいたたまれない。ユーチューブのコメントも母親の異常性と娘への同情がほとんどである。それについてなんとも言えぬ違和感。本当にその感想「だけ」でいいのか?

 

「お前は毒親というものをわかっていない。毒親はお前が考えるような生ぬるいものではないんだ」

 

と言われたらそうかも知れない。だからこそ、この本だけではなく、別の本でも毒親の性質について知りたい(知らなければならない)と思った読書体験でした。

ついでに、Audibleでもこの本があるんだけど、あまりおすすめしない。母親の罵倒の嵐を耳で聴くと、気持ちがどんどん萎縮してしまうからね(苦笑)