育児してなきゃ酒浸り日記

30代のサラリーマンです。2人の息子と妻との日々を書いています。只今育休中です。

『子育ての知恵』を読む 子育てはわからないことだらけであることを再認識

今日は「子育ての知恵 幼児のための心理学」を読む。

「育児は母の手で」「三つ子の魂百まで」「「ママがいい」に決まってる」……。根強くまかり通る育児神話や「通説」。それに翻弄される多くの保護者たち、とりわけ母親たち。実際のところ、子どもは何を訴えているのか、様々な仕草はどのような発達の表れなのか? 発達心理学の長年の研究成果をもとに、確かな育児の知識を平易に伝える一冊。 岩波書店 https://www.iwanami.co.jp/book/b432947.html

 

「子育て体験本」・「(怪しげな識者の)ハウツー本」とは違い、学術研究をベースにしているため、内容は至ってかため。

各章は以下の通り。

第一章 心の発達 三つ子の魂百までか 第二章 母親の神話 「愛着」の心理学 第三章 幼児の人間関係 子どもからの報告 第四章 わたしが主人公 自己主張と自制心 第五章 子どもと社会 あなたの子どもは、あなたの子どもではありません

発達心理学」というのは、子育てを考える上で重要な分野なんだと思うけど、研究するのはなかなか難しいことであることを感じる。実験規模を大きくすることは難しいし、〇〇をしたから△△という結果が出た、と、どの年齢段階で結論づけるかも言いづらい。また、本当に注目した要素が因果関係になったのかも検証するのが難しい。著書の中でも、特定年齢で8ヶ月間の特別プログラムを受けた子どもたちがその後どのような影響を受けたかの論文を引き合いに出しているが、このプログラムが効果的だったのか、それともその後にプログラムの影響を受けた両親の教育が影響を与えたのかは区別しづらい。

こういう難しいテーマだからこそ、世の中には怪しい教育スペシャリストたちが「こうすれば良くなる!」とか「東大式」とかを声高にし易いのだとは思う。

 

さて、発達心理学の研究成果をベースにしながら書かれている本なので、何かありがたい子育て術を教えてくれるわけではない(していたら眉唾)。そのため、身近な育児のダイレクトな解決策を期待すると、少し肩すかしを食らう。でも、個人的には、自分の頭の大半を占める「育児」という営みが更に興味深く感じられるようになった。

興味を持った点をメモ的に下記に残す。

・第1章

ブロンフェンブレンナーの生態学的モデルを元に、子どもを取り巻く環境を客観視してみてもよいかもしれない。(以下のブログが更に詳細にまとめてくれている)ikuji-hoiku.net

・第二章 子育ては母親がやるべき!という、今でも根強い主張の由来と、その根拠、そして正当性について述べている。ボウルヴィの愛着理論は素人の私でも聞いた事があるくらい有名だけど、こういった理論が根強く現代の常識として残っている。そして、その正当性がそこまで確かなものではないことは、いくつもの実験で検証されているが、なかなか固定化された考えはかわらない。産業革命の都合で、性別での役割分担が強調され、そこで男は仕事、女は家事育児となった。決してこの分担が子どものためになる、という根拠があったわけではない。要はそういう分担が都合が良かっただけ、ということなんだろう。酒は百薬の長とかもそうだけど、いっときの都合の良い考え方があたかも正しいものとして残っていくのは不思議なことだ。今はこの分担に拘る必要はないし、時代の変遷とともに変わりつつある。

・第三章

著者が発案した子どもの人間関係「愛情のネットワーク」を可視化するためのツール「PART(絵画愛情の関係検査)」の手法紹介と、使用した際の研究成果。おそらく、この本のハイライトではなかろうか。

PARTは下記で試すことができる。大体、3歳6ヶ月頃から問題なく使用できるよう。

www.keiko-takahashi.com

理屈っぽい子育てお父さんは面白く読めるかもしれない。育児ノウハウはないので実用性はないけど、育児への向き合い方を教えてくれる良著。